ぼっかの糸はとてもシンプルです。
染めもせず、装飾もしません。
毛刈りしてひつじから離れた毛を、ただ、出来る限り傷めることのないように、
選別し、洗い、ごみを除き、ほぐし整え、紡いで仕上げるまでをすべて手作業で、糸にしております。
華やかではないけれど、糸のふくよかさがよくわかるように、
ひつじによってまるで違う、糸の個性がわかるように。
素のまま、でも、それだけでも雰囲気のある糸。
そして、鮮やかに染められた糸と合わせたときには、そっとその色を引き立て、
そこに温かさを加えることの出来るような糸を目指し、無垢で純粋な糸を紡ぎます。
○ ぼっかの糸はひつじの糸
生みだしたい糸は、ひつじの糸。
私にとっての良い糸は、ひつじの個性が活きている糸。
素朴という言葉で表すようなものとは少し違う。
日々そのひつじの暮らしぶりを見ている羊飼いの方が教えてくださったその子の性格や、
じっくりと観察し、触れることで伝わってくるその子の毛の特徴。
品種などでは区別できるはずのない、それぞれの、毛をくれたひつじの持ち味を
そのまま糸に表す素直な糸。
作り目を編んでからとじるまでの間にほんの一瞬でも、広い牧草地の空が頭に浮かんでくるような、そんな糸。
ひとつひとつ 羊毛を洗いながら想像して、どんな糸にしようかなと 干しあがってからもずっと、
考えながら 探りながら やっと糸になってくれる、
愛おしい、うまれたての糸たちです。
糸になってしまえばみなさまのところで、何にでもなれる自由な糸たち。
糸を手に取る方それぞれに糸への想いがあり、糸はその分だけ、様々なものになれる。
紡ぎあがった糸たちがそれぞれの場所でそれぞれに形を得ていき、
またいつかきっとほどかれて、糸に戻るときがきたりして、そうしたら、
ふたたび別の形へと、きっとまた 生まれ変わる。
心にあるいくつもの牧場の風景を想いながら、糸たちのこれからを楽しみに、
はなうたまじりに紡いでいます。











○ 素材の良さを失わないために
紡いでいる糸はすべて、牧場で愛情をかけ大切に飼われているひつじの毛をわけていただき、
一頭分の羊毛をひとふさひとふさ、毛先まで丁寧に汚れを落とすことから作業が始まります。
糸になるまでは、きっと思われる以上に長い。
ですが、化学薬品の力や大きな機械に頼らず手で洗うことで得られる質の良さは、何にも劣りません。
触れて感じるそのふくよかさは、格別です。
繊維を傷めることなく、そして自分で調節して多く残すことのできるひつじの脂分、
空気をたっぷりと含ませて、優しく加減した撚り具合によって、
羊毛の持つ保温性、撥水性、弾力など、身につけるときにとてもすばらしい効果をもたらしてくれます。
何より、自らの手で洗うことでその羊毛の特徴をよく知ることができ、どんな糸にしようか、私を導いてくれます。
しっとりと、くったりとした糸、ぽんと弾むような糸は、それぞれのひつじの個性。
まるで生き物のような糸です。
